世渡り上手

マンションの入り口で、ベビーカー押した若いママさんが鍵を出そうともたもたしてた。
＃ウチは玄関口がオートロック。
で、わしが鍵出して開けると、ママさんはこちらにぺこりと頭を下げて中に入っていった。
ベビーカーの赤ちゃんはずっと泣きわめいてる。
「イヤーーーイヤァーーウワーーーン」
「何が嫌やのん！」
「イヤアアアア」
ママさんはエレベーターホールへ、わしは郵便物を確認しにポストへ。
チラシだけ入ってたのでそれを回収、エレベーターんとこに行くとまだ降りてきてなかった。
「イヤァアーーーギャァーーー」
全く泣きやむ気配なし。ママさんが時々叱りつけるも効果無し。
やがて箱が降りてきたのでママさんを先に乗せる。降りるのは彼女のほうが先だったので、目的の階では先に降りてドアを押さえてあげる。
「あ、すいませーん」
「ギャーーーーーウヮーーーーン」
箱の中に戻って閉まるを押そうとして、ふと気がつく。
赤ちゃんが涙もよだれもない綺麗な顔で、おとぼけた表情でこっちを向いて「バイバイ」とたどたどしく手を振っている。
可愛かったので笑顔で振り返す。
ドアが閉まる。
「イヤァーーーーイ”ヤァーーー」
廊下に響く泣き声。叱るママさんの声。

あれが赤ちゃん流処世術か…！