あたらしい住人

ミツキとリョウが住んでいたシェアハウスはもともとミツキの持ち物で、離婚の際にリョウに譲渡された。
この広い家をリョウとコトネ二人で維持するには資産が厳しい。
なので空き部屋に人を入れることにした。
面接の際、一番重視したのはその人間の性的関心。
自分はともかく若いコトネが家にいる。彼女に害のない人間でなければならない。
レンのような多情な男は論外なのだ。

何人か面接したのち、現れたのはマシューという青年だった。
絵にかいたようなギークで、チェックシャツにジーンズ、ぼさぼさの長髪にメガネ、ノートパソコン片手にやってきた。
寝るところがあればいいんで、と彼は言った。仕事はやはりネット関係らしい。
世帯の変化の可能性のために聞くが、お付き合いしている方や結婚を考えている方はと聞くと、なんと彼はアセクでアロマンだという。
「そういう言葉が当てはまるのかはわかりませんけどね。セックスしたいとかも思ったことないし、エロ雑誌も何も感じない。恋愛の意味で好きになった人もいないし、そういうことだと思えば楽になりましたよ」

一緒に暮らしてみると、彼はとても居心地のいい存在であることが判った。
聞いていないようで聞いている、余計なことは言わないが言うべきことは言う、過度な干渉もせず、日がなパソコンにかじりついている。
座りっぱなしの生活のせいか筋トレに力を入れていて、見た目にそぐわず肩周りや胸の筋肉は凄い。
触っていい? と聞いたコトネに胸を突き出したが、そっと撫でる手つきにくすぐったいと笑った。
やはりそういう方面へ感情は動かないようだった。
絵を描くのに熱中してアトリエにこもっているリョウに、時間を告げに来ることもよくあった。
お腹空いてるんじゃないですか。水飲みましたか。そんな声をかけながら。