コトネとイオリの結婚

海外をふらふらしていた弟が帰ってきた、家もないから住まわせる。リョウはそう周囲に説明した。誰も深くは詮索しなかった。

生まれ落ちてすぐ、イオリはリョウから聞かされていた。コトネのこと、彼女がリョウを想っていること、自分では応えられないこと。できるなら幸せにしてほしいと、託されてもいた。だが実際にコトネを前にすると、そんなことはどうでもよくなった。

イオリは出会った日からコトネに向かって全力だった。言葉を尽くして褒め、誘い、笑顔にしようとし続けた。三日と経たずロマンスは実を結び、イオリはカフェで求婚した。

コトネは戸惑った。姉の裏切りを知ってから、弱っている人につけ込むことの醜さを、誰よりも知っているつもりだった。それなのに今、自分がまさにその立場になろうとしている。

イオリは、コトネがリョウを想っていることも知っていると告げた。それでも構わないと言い切り、代わりに聞いた。俺のことは、好きか、と。

迷いながらも、コトネは頷いた。