少女向けの小説を書く人ではない。
少女だった、50年くらい前に高校生デビューした小説家。
当時小学生だった私は友達が持っていた彼女の本を読んで衝撃を受け、これを高校生が書いてプロの作家として活動してるのだという事実に驚愕した。
#高校生の時、3年ほど前に中学デビューした漫画家がいると知ってそれはそれで衝撃だった。
その後小説家という仕事に憧れるようになってちまちま拙い小説書いたりしていたが、文体が彼女そっくりだと指摘されてからは積極的には読まなくなった。
文体を変えるためにいろいろ努力してそれは何とかなったが、高校を卒業するころには小説家になるにはあまりにも自分が拙く幼い考えしかないことに気付き(そもそも「完」まで持って行けた話がほぼなかった)、夢は夢のままで、生活にリソースを割くようになった。
その頃には彼女自体SFよりもサイコホラーや日常エッセイのようなものを書くようになっていたため、読むことはほぼなくなった。
結婚を題材にした日常小説は彼女と旦那さんがモデルということもあって興味があったから読んだ。
彼女は「主役の女性は自分がモデルだがここ迄素っ頓狂ではない」とあとがきで書いていた。
大分経ってから、SF界で絶賛されてた本を買って読んだ。久しぶりにまともなSFだった。サイコホラー風味でもあった。
先日ふと思い出したので検索したら、結婚を題材にしたシリーズで読んでないものが2冊あった。それと、コバルトで出てた本のアンサー的な長編が出版されていた。
図書館で予約したところ、まず来たのが結婚シリーズの最終章。
2時間ほどで読んだ。中はエッセイのようなものなので、ほぼ速読。あとがきに「ほとんど実話です」とあった。
…主役の女性は自分ではないと言っていたのがもうなかったことになっている。まぁ当時からして「ほぼ実話だろ」とは思ってたけど。
しかし、当時20代~30代だった主人公が60代になっていて、この人たちは昭和の人なんだな、と改めて思った。
まず旦那の言動や行動が全く共感できず引いた。家事は全部母親がやるのが当たり前なんだろうなって感じ。やってることを見ていても頭に入っていないから、同じことをやれと言っても判らない。言われた事しかできないがマニュアル通りにやる事は出来るタイプ。
そして主役女性の素っ頓狂ぶりはもう病的で、現代人とは思えないアナログ人間だった。
デジタルに対する感覚が私の80代の母とほぼ変わらないのは異常。60代ってそんなに機械オンチか? まぁ私がデジタルに強いほうなのは否めないが。今の50代は無駄に詳しいか全然知らんかどっちかだし。
けど全然知らなくてもスマホもQRコードも使えてる世代だぞ。60代の営業マンだって普通に使ってる。
とにかく違和感しかないまま読了した。
2冊目の本が手元に来た。アンサー小説。厚い。
開いたら2段組だった。2段組でこの厚さって、原稿用紙何枚書いたんだろう。
プロローグ部分だけ目を通した。
登場人物は50代だけど口調は20代というかコバルトというかいつもの彼女の文体で、正直50代の思考や言葉遣いではないと思った。
複数人が登場する群像劇ということで、基本の登場人物をはじめに紹介するためかわるがわるメインになっていたが、それぞれに自己紹介が入り、その細かい背景は今後必要なの? と思うくらい書かれていた。
結婚シリーズ最終章で俳句について述べていた時「行間を読んでもらうことは当然あるが、判る小説を書くことを心掛けており、文章の中に必ず説明を織り込む」と主役女性が言っていた。
そう言うことなのだろう。丁寧な説明だ。丁寧すぎるくらい丁寧な。
それを冗長と取るか取らないかは読み手次第であり、私は冗長だと思った。出だしでいきなりもたついた感増し増し。
ここから引き込まれる流れになるだろうか。それとも速読で終わってしまうのか。
さてどうだろう。この続きは読後に。
読み終えた。
後半は勢いも付いてきて読めたけど、前半はやっぱり冗長だったな。
各キャラクターの背景はストーリーの核に何ら影響がないように思える。
大人でありそういう背景を背負っているのだから思い切った行動は取れない、という説明のための背景なのはわかる。だが主人公は行動している間中その背景の人たちとのかかわりは一切なかったし、他の人も同様。
年齢にもこだわりがあったように感じるけど、年齢設定が生きているのは中学生たちとじーさんだけのように思えた。
年齢と生活のために抱えていた問題については何の解決もされていないし、一体何のためにこの設定を生かしているのか謎。
#これについては各所のレビューでも言われていた。
ストーリーテラーは呪術師だと思うんだけど、最後は出番無く終わっちゃうってどうなんだろう。
主人公女性は元校閲者だったという設定だが、これは彼女の親の職業そのまま。手に職を持ってるキャラクターってこの設定になってることが多い気がするのは、彼女自身就職した経験がないからだと思う。
で、再就職するにも相手方は若い人のほうがいいだろうと判断しているシーンがあるが、校閲者の事はあまり知らないが校正者に関しては毎日見てるから判る。
未経験の新人より経験を積んだある程度の年齢の人のほうが仕事も早いし間違いも少ない。
主人公女性が正社員として働くには年齢が壁になるかもしれないが、派遣登録なりパートなり、経験者優遇で就職するすべはあっただろうと思う。校閲は出版社が主だと思うが、同じような技能の校正者なら印刷屋はウエルカムだ。
いつ猫のアンサー小説と言うのは何となく感じた。
縁もゆかりもなかった人たちが、一つの現象をきっかけに集まりだし団結する。
エンディング付近の展開と心意気は、確かにいつ猫だった。
あとこれSFとしての評価が高いらしいけど、私には怪奇現象ホラーとしか思えなかった。妖怪とか和モノのばけもんが出てくる時点でサイエンスフィクションではないな。スペースファンタジーでもない。藤子不二雄的な「スコシフシギ」かな?
昭和の家庭観が強く感じられたように思う。これを「当たり前の家庭」として書いてるのか「今の常識に当てはまらない古い家庭」として書いているのか不明なんだけど、一つ前に読んだ本における家庭観を考えると前者かもしれない。
最後の一冊がまだ手元に来ていないんだけど、正直、もういいかなって感じ。
彼女が20代の頃に書いた作品は今でも手元にあるし楽しく読めるんだけど、文体は同じでも何か違う。
評論家は熟練のなんだの言ってるけど、それなんだとすると私はその熟練となってしまった感性が合わないのだろう。若さで筆が走りまくってる感じが好きだったのかもしれない。
エゴサしたらこれ引っかかるかもしれんと思ったのでとりあえず名前は伏せた。
が、彼女はでエゴサするような暇があったら本を読むだろうから気にするほどでもないかもしれない。